99%のソフトウェアと50%のハードウェアで,もう同じ「好き」は存在しない,と云われる。ということは,違う「好き」を引き出せなければ取り返しのつかない失敗に終わる。いま,アップルはそういう状況にある。
先週のオライリー・マックOS X・カンファレンスは,マックとユニックスの双方から指導的立場の人が集まった。キーノート中の調査では,OS Xの前にユニックスを使っていた人も,OS Xの前にマックを使っていた人も75%ぐらいで,両方に手を上げた人も多かった。仕事場でユニックス,家ではマックを使っていた人が多かったのかもしれない。
アップルは変わった。それはもうまったく別モノのように変わった。OS 9のときのアップルが好きだったという人で,OS Xのアップルも同じ理由で好きだという人はいないはずだ。そんなことは,あり得ない。たとえば,以前のアップルは自分の会社が作ったモノ以外はなにも認めようとしなかった。意固地なまでの純血主義を貫き通していた。だがいまは,オープンソースを身にまとい,オープンスタンダードの実装をいちばんに考えている。MPEG4完全サポートのクイックタイム,ゼロコンフ規格に準拠したランデブー,オープンGL 3Dによるクオーツ・エクストリーム,vCard書き出しをサポートしたアドレスブック,iCalendar形式準拠のiCalなど,もちろんOS Xコアのマーク・カーネル,BSD,さらに素晴らしいJAVAの実装も含まれる。
過去のアップルには,アップル教信者とも云うべき者たちがいた。ハタからみたら今も同じと思っている人は多いかもしれないが,それは偏見にとらわれているだけで,実際はそのような印象がかなり薄らいだ。それは,過去の信者をOS Xで裏切り続けていることにもよるし,新しいユニックスユーザーを親身に迎え入れていることにもよる。そしてユニックスユーザーは,かなり好意をもってOS Xに接している。以前はウインドウズとユニックスのデュアルブートマシンを使っていたが,いまはマックOS Xだけだ,というユニックスユーザーは多い。彼らの声,そしてOS Xの新しいマックにほれ直した古くからのマックユーザーからの,いままでとは違う「好き」が,明日をつくっていく。
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